カテゴリ:ベルツリーの不動産コラム / 投稿日付:2026/05/17 12:24
ペアローンを組む前に絶対知っておくべき
「離婚・ペア育休・売却」の3大リスクと現実的な対策
最終更新日: 2026年5月17日
都市部を中心とした不動産価格の上昇に伴い、夫婦それぞれが主たる債務者となってローンを組む「ペアローン」を選択する世帯が増えています。お互いの収入を合算することで、単独では難しかった条件の住まいを購入できるほか、住宅ローン控除を夫婦それぞれで活用できるなど、多くのメリットが挙げられます。
しかし、不動産取引の実務において、ペアローンは借入額を増やせる一方で、ライフステージの変化に対して脆いという側面を持ち合わせています。今回は、ペアローンを検討する上で避けて通れない「離婚」「ペア育休」「売却」という3大リスクの本質と、そのリスクをコントロールするための現実的な対策について解説します。
1.第1のリスク:【離婚】法律と契約のねじれが引き起こす問題
35年という長期にわたるローン返済期間中、夫婦の関係性が変化する可能性はゼロではありません。単独ローンであれば「家を手放すか、住み続けるか」のシンプルな判断で済むものが、ペアローンの場合は法律(財産分与)と銀行契約(金銭消費貸借契約)のねじれによって、当事者だけでは解決が難しい複雑な問題へと発展します。
最大の問題は「家を売ってもローンが残る(オーバーローン)」とき
離婚に伴いマイホームを売却し、売却代金で住宅ローンを完全に完済(アンダーローン)できれば、手元に残ったお金を財産分与として分けるだけで済みます。しかし、購入直後の数年間や、物件価値の目減りが激しいエリアの場合、売却額がローン残高を下回る「オーバーローン」状態になるケースがあります。
この場合、銀行の抵当権を抹消できないため、原則として物件を売却することができません。売却するためには、不足分を現金で補填する必要がありますが、離婚の手続きを進める局面で、数百万円の現金を夫婦それぞれが折半して用意することは容易ではありません。
「どちらか一方が住み続ける」という選択の罠
売却を諦め、「妻と子どもがそのまま住み続け、夫が自分の分のローンを払い続ける」という約束を交わして離婚するケースが実務上見られますが、これは以下の点から注意が必要です。
- 名義変更の壁: 離婚を理由に「夫のローン名義を妻に変更したい」と申し出ても、銀行が応じることはほとんどありません。銀行は夫婦二人の収入を担保にお金を貸しているため、妻一人の収入では審査が通らないからです。
- 返済滞納のリスク: 家を出た側が数年後に生活困窮などに陥りローンの支払いを停止した場合、銀行は当然、住み続けている側に対して全額の返済を要求してきます。最悪の場合、家を差し押さえられる事態に陥ります。
- 連帯保証関係の継続: ペアローンは互いが互いの連帯保証人になっていることが大半です。離婚届を提出しても、銀行との契約上は、元配偶者の債務の連帯保証人であり続けます。
2.第2のリスク:【ペア育休・産休】手取り収入の大幅減少によるキャッシュフローの圧迫
近年、夫婦で同時に育休を取得する「ペア育休」の推進や制度の拡充が進んでいます。育児を夫婦で分担できる一方で、これをペアローン返済開始後に行う場合、事前の緻密な資金シミュレーションが欠かせません。
「額面収入」をベースに借入上限枠いっぱいで組むリスク
夫婦の「現在の額面年収」を合算して借入可能額を目一杯に算出している計画の場合、最大の弱点は、産休・育休期間中の「手取り収入の減少」が考慮されていない点にあります。育児休業給付金は、原則として休業開始前の賃金の67%(半年経過後は50%)が支給されます。社会保険料の免除などがあるため実質的な手取りベースでは約8割が担保されると説明されることが多いですが、給付額には上限が設定されている点に注意が必要です。
育休期間中のキャッシュフローの変化(モデルケース)
夫婦で毎月それぞれ15万円(世帯合計30万円)のローン返済を行っているケースを想定します。
- 通常時: 夫婦それぞれの手取り月収が30万円ずつあれば、返済後も手元に30万円が残り、生活費や貯蓄に回せます。
- ペア育休時: 給付金の手取りが約23万円に減少します。しかし、毎月のローン返済額(15万円)は減りません。結果として、自由に使えるお金は1人あたり8万円(世帯で16万円)へと減少します。
ここに子どもの生活費やベビー用品の購入費用などが上乗せされるため、一時的に家計の収支のバランスが崩れ、DINKS時代の貯蓄を切り崩して耐える生活を強いられることになります。
時短勤務による「復職後」の盲点
育休期間が終了し職場に復帰した後も注意が必要です。特に保育園の送り迎えなどの関係から、どちらか一方が(あるいは双方が)「時短勤務」を選択する場合、収入は元の水準には戻りません。基本給が勤務時間に応じてカットされるだけでなく、残業代やボーナスも減少することが一般的です。ペアローンを組む際は、「片方が時短勤務になっても、毎月の返済を維持できるか」という基準で予算を設定しなければなりません。
3.第3のリスク:【売却の制限】単独名義とは異なる処分の難しさ
転勤、住み替え、親の介護など、人生においてマイホームを「売却」せざるを得ない局面は訪れます。単独名義のローンであれば、所有者一人の意思で売却を進めることができますが、ペアローンで購入した物件は、法的な権利関係が複雑になります。
名義(共有持分)とローン契約の二重の縛り
ペアローンで購入した不動産は、夫婦それぞれの資金拠出割合(ローンの借入割合)に応じて、登記簿上の「共有持分」を設定します。不動産を売却するためには、共有者全員(つまり夫婦双方)の同意が法的に必須となります。どちらか一方が「まだ売りたくない」と主張した場合、どれだけ売却が必要な状況であっても、家を売ることはできません。
| 検討項目 | 単独ローンの場合 | ペアローンの場合 |
|---|---|---|
| 売却の意思決定 | 名義人1人の判断で決定可能 | 夫婦双方の同意が必須。意見の不一致で長期化リスクあり |
| 売却時の契約手続き | 1人の署名・捺印、本人確認で完了 | 夫婦それぞれが契約書への署名、実印の捺印、書類提出が必要 |
| オーバーローン時の対応 | 名義人1人の資産・追加入金で解決可能 | 不足額をどちらがいくら負担するかで協議が必要 |
| 買換特例や税制優遇 | 1人分の要件を確認すればOK | 双方の税務状況(所有期間や居住要件など)の確認が必要 |
さらに実務上で煩雑なのが、売却契約時の手続きです。不動産売買契約時や、引き渡し時の司法書士による本人確認において、夫婦双方がそれぞれの意思で売却に同意していることを証明しなければなりません。仮に一方が海外赴任中であったり、病気で意思疎通が困難になっていたり、関係悪化によって連絡を拒絶している場合、売却の手続きは一時的にストップしてしまいます。
4.ペアローン破綻を防ぐための「4つの現実的な対策」
ペアローンそのものが不適切なわけではありません。重要なのは、仕組みを理解した上で、リスクを許容範囲内に収めるための事前の対策を講じておくことです。
対策1:「夫婦の年収合算額の70%」を上限として予算を組む
銀行の審査が通る限界まで借りるのではなく、自主的に借入上限を制限します。例えば、夫婦の年収の合計額から3割を最初から差し引いた金額を「理論上の世帯年収」と仮定してローンのシミュレーションを行います。これにより、産休・育休や時短勤務による一時的な収入減が発生しても、家計が破綻するリスクを低減できます。
対策2:購入時に「売却前提の資産価値」を徹底的に重視する
ペアローン最大の弱点である「オーバーローンによる売却不能」を防ぐためには、数年経っても価格が落ちにくい、あるいは値上がりが期待できる物件選びが重要です。駅徒歩5分以内の好立地マンションや、人口流入が続くエリアの戸建てなど、「万が一の時にはいつでもローン残高以上で売れる」という流動性の高い物件(資産価値の高い不動産)を選んでおくことが保険となります。
対策3:返済口座とは別に「半年分の生活・返済予備金」を確保する
住宅ローンの返済が始まると、毎月の給与から自動的に引き落とされます。育休中などでキャッシュフローが一時的に悪化することを見越し、住宅購入時の諸費用や頭金とは別に、最低でも「世帯の固定費(ローン+生活費)の6ヶ月分」を、手をつけないプール金として残しておきます。この予備費があるだけで、育休中の突発的な出費にも対応できるようになります。
対策4:ローンの比率と「実際の頭金拠出額」を合致させる
共有名義のトラブルで多いのが、「誰がいくら出したか」が曖昧になっているケースです。親からの贈与や独身時代の貯蓄から頭金を出した場合は、その金額とローンの借入比率(持分比率)が税法上正しく一致しているかを必ず税理士や司法書士に確認してください。また、万が一の離婚時や売却時にどのようなルールで財産を清算するかを、夫婦間で事前にメモや書面の形で残しておくこともリスクマネジメントの一つです。
結びに:ペアローンは「共同経営」であるという視点
ペアローンを組んでマイホームを購入することは、夫婦で一つの事業を立ち上げ、共同経営していくことに似ています。お互いが健康でフルタイムで働いている時のメリットだけでなく、リスクが発生した時の「出口戦略」を事前に共有できていることが、長期にわたる返済を維持する鍵となります。
ベルツリーでは、単に借入可能額を算出するだけでなく、お客様のご家族が将来にわたって安定して暮らせるよう、ライフプランから逆算した資金計画をご提案しています。メリットもリスクも客観的にお伝えし、最適な住まい選びに伴走いたします。ぜひお気軽にご相談ください。
専門家への確認のお願い
本記事で紹介したペアローンに関するリスク、税制優遇(住宅ローン控除)、育児休業給付金の制度等は、2026年5月時点の法令・制度に基づいた一般的な解説です。実際のローンの審査基準、売却時の税務(譲渡所得税)、財産分与に関する法的な解釈などは、各個人の状況、金融機関の規定、個別事案により異なります。具体的な資金計画や法的な契約内容、税務上の判断については、必ず事前に金融機関の担当窓口、弁護士、税理士、または専門の司法書士へご確認をお願いいたします。
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